MAZDA LANTIS 1993
LANTISは軟派に捉えられがちだけど実は硬派なクルマ。
1993年 LANTIS 5DoorHardtopCoupe 2000V6 TypeR 5MT (MAZDA)
友人知人のクルマImpression第2弾です。
実はLANTISは筆者周辺では人気車種です。ここでは、LANTISの真骨頂であるV6TypeRを中心に、普及版故にパッケージの特徴が際立つTypeGの4ATについても触れてみたいと思います。
LANTISの特徴
- 5DoorCoupe
LANTISは5DoorHardtopCoupeと4DoorHardtopSedanのラインアップ。5Doorは世界的に見ても珍しいカテゴリーのクルマです。5DoorでHachBackの実用性を兼ね備えながら流麗なCoupeStyle。祖先はFAMILIAのASTINA(あるいはEUNOS100)。さらに源流はFAMILIAの5HBとETUDEに見ることができると思います。爆発的に売れた初代FF FAMILIAは3HB(HachBack)・4SD(SeDan)・5HBのラインアップを持っていました。2代目も同様のラインアップでしたが、派生車種としてETUDEを誕生させました。3代目のフルモデルチェンジにあたり、もともとの3HB・4SD・5HBのラインアップにもっと個性を持たせようと考えたようです。(実はその前に出たCIVIC(ワンダーシビック)が3HB・4SD・5HBを全くの別設計にして個性を出し、大成功を収めていたのです。)そこで、当時一番売行きの悪かった5HBにどのような個性を与えたら良いか?ETUDEの薫りを入れてSpecialityに仕上げたのです。それが、ASTINAでした。一方ETUDEの方は正常進化(?)を果たしEUNOS PRESSO(あるいはAZ-3)となっています。ASTINAは欧州を中心にある程度の成功を収めたため存続となったようです。欧州ではASTINAもLANTISも323Fの車名でした。さて、日本においてはブランドを独立させて量を売るためには5Doorだけでは足りないと判断したようです。そこで、4Doorもラインアップに加えたわけですが、これは大失敗だったと言わざるを得ません。5DoorのCoupeStyleは他に無い個性的なクルマに映りますが、4DoorはCARINA ED・CORONA EXIV・COROLLA CERES・SPRINTER MARINO・PRESEA・EMERALDE等、散々出されている(しかも、MAZDAでもPERSONAそしてEUNOS500と出していた)上にこれらのカテゴリーのクルマのイメージがガタ落ちの時期でした。そこで、同カテゴリーのクルマの中では硬派Sports寄りであったために、当時硬派でイメージの高かったPREMERAをライバルとして引き合いに出そうとしたのですが、中身はともかく外観からとてもライバルには見てもらえませんでした。かくして、LANTISは拡販のために加えた4Doorのイメージの悪さが足を引っ張って5Doorの地位さえ失うこととなった悲運のクルマです。 - V6 2000ccエンジン
当時のMAZDAは2000ccクラスのエンジンはV型6気筒に統一となっていたようで、2000ccクラスに対応する4気筒エンジンの開発を行っていませんでした。バブルだったわけですが、そのお陰でFAMILIAクラスのクルマに6気筒エンジンが載って、しかもLuxuryでは無くSportsに使われるという、今となってはとても考えられない贅沢な作りになっていたのです。 - Greenのイメージカラー
車体色SparkleGreenをイメージカラーとしたLANTISの5Doorは内装までGreenでコーディネート。シートのみならずドアトリム、果てはインパネまでGreenになっています。Blueで統一とかMaloonで統一とかは良くありますが、Greenで統一は非常に珍しいです。Green好きの筆者はビシバシ来るものを感じます。 - 実用性
LANTISはイメージよりずっと硬派なクルマです。全長を4245mmと極限まで切り詰めながら、ホイールベースは2605mmと当時のPREMERAよりも長く高さ方向以外の実用性はとことん追求されています。2000ccのV6エンジンを搭載するようなFFのクルマでフロントオーバハングが800mmを切る(バンパー部除く)クルマなんてそうそう無いですよ。その結果、居住性については高さ方向が不足気味ながらも幅、長さ方向についてはよく出来ていると思います。また、ラゲッジには走りの追求のためストラットタワーバーが装着されていたりしますが、容量は330lあり、実用性はきっちり確保。スタイルと走りと実用性の高度な追求と融合は現在のFAMILIA S-WAGONよりもずっと高いレベルにあります。S-WAGONの方が売れているのはイメージと(適度に安っちい)車格がマッチしているからです。LANTISはイメージと車格と実力がちぐはぐで理解されづらいクルマだったと思います。 - フロントシート
このシート、クッションは全高が低い関係で設計的に厳しく、見るべきものがありませんが、バック(背もたれ)はとても出来が良いです。サポート性を重視していながら窮屈と言うほどでもなく、ぴったりと包まれている感じです。肩までしっかりとサポートされているのがまたGood。スポーツタイプのシートでも肩のサポートは放棄しているものが大多数ですから(難しいんでしょうね)。張り出しの強い設計ながら、比較的広い範囲の体格に適合するというバランスの取れたシートでした。 - リアウィンドウ
硬派な作りはこんなところにも現れています。サッシュレスで三角窓の無いドアなのですが、大抵そのようなリアドアのウィンドウはちょっとしか開きません。ですが、LANTISはリアウィンドウが全開します。これは、ウィンドウ自体が小さめであるということもありますが、ウィンドウの開け方を曲線的に下降させることで、うまくドアボディ内にガラスを収め切るという技をやってのけています。国産メーカだったら大抵即妥協して、通常どおり直線的に下ろしてぶつかるまで開ければO.K.としてしまうところです。こんな、まじめな作りをしているのに実際に動作させるとグネグネと踊りながら(?)窓が降りていくさまは笑えてしまうだけというのが悲しいです。もっと、認めてあげて下さい。
Impression
まじめに走りを追求していることが良く分かります。走り心地も操作性も統一したイメージを持たせるチューニングがなされています。言うなればそれは「剛性感」。
運転してみれば、チャラチャラしたイメージは全く無くなってしまうと思います。V6エンジンも単にバブルの落とし子では無く、しっかりと洗練されたスポーツサウンドを奏でることで「剛性感」という統一されたイメージを持たせる効果の一端をきっちり担っています。欲を言えばもうちょっとエンジンを軽くしてフロントヘビー感を減少させたいところです。
1800ccの4気筒を積むTypeGの4ATでは、普及版となるせいか特に何てこと無いクルマになっています。いわば雰囲気優先のSpecialityですね。それでも、足回りを中心とした素性の良さは感じさせてくれます。エンジンも高回転寄りのチューニングですが、どうってことないですね。「昔は価格も考えればこれもあり」と思っていたのですが、今考えるとTypeRのキャラは捨てがたいものがありますね。項目 単位 値 コメント 全 長x幅x高 mm 4245x1695x1355 意外に高さがある ホイールベース mm 2605 実用的 トレッド 前/後 mm 1465/1465 室内 長x幅x高 mm 1870x1420x1120 高さを除けば十分 最低地上高 mm 150 真面目に取ってある 車両重量 kg 1210 V6にしては軽い 最小回転半径 m 5.3 フロントオーバハングが短いので実質小回りが利く方 10・15モード燃費 km/l 11.4 うーむ エンジン型式 − KF-ZE エンジン種類 − V6DOHC 内径 x 行程 mm 78.0x69.6 総排気量 cc 1995 圧縮比 − 10.0 最高出力 ps/rpm 170/7000 回転数の割に出ない 最大トルク kg-m/rpm 18.3/5500 結構な高回転型 燃料/タンク容量 l プレミアム/55 タイヤサイズ − 205/50R16