MAZDA FAMILIA 1994
FF4代目FAMILIAは最高から最低へ転落の一途を辿ったクルマ。
1994年 FAMILIA 4DoorSedan 1500DOHC-Leanbern GS-L 5MT (MAZDA)
友人知人のクルマImpression第3弾です。
このクルマは筆者を購入寸前まで考えさせたクルマでした。リーンバーンエンジンはトルク重視型で好燃費を期待できますし、キャビンもトランクも広々。
ただ一点気掛かりだったのが、グレード。この時のグレード展開はお買い得のLS・スポーティなRS・豪華なGS(さらにイメージリーダーのInterPlay Xがありました。)となっていて、リーンバーンエンジン仕様は豪華版のGS(-Lはリーンバーンの印)しかなかったのです。
RSに比べると幾つかの走りの装備が省かれて豪華装備が付けられてお値段はかなり高めという設定でした。筆者はRS-Lが欲しかったのです。
でも、グレード展開は変わることなく、バブル崩壊の煽りを受けてコストダウンの小変更を繰り返しました。マイナーチェンジでアルトをも下回る質感のボロ安インパネに変更された時、購入の意欲は完全に消え失せました。
発表当時は2000ccクラスの居住性、実用性、快適性、装備を1500ccクラスの車体と価格で提供するという、とっても魅力あるクルマだったのですが、フルモデルチェンジの直前にはドンガラがでかいだけの営業車になってしまいました。しかも、値段はむしろ高くなって。
時代背景もコスト計算の甘さもあって可愛そうな運命を辿ったFF4代目FAMILIAでしたが、それ以外にも不運はありました。
それは、発表以降ずっと各自動車雑誌から一斉に車体サイズがデカ過ぎるとブーイングを浴びせられつづけたことです。これにはさすがに同情せざるを得ません。
たしかに、見た目は1500ccクラスとしては大き過ぎたかもしれません。しかし、それはキャビンが大きかったのであって車体全体が大きかったわけではないのです。
例えば全長は4335mmでしたが、当時のCIVIC FERIOは4450mmでPREMERAを超えておりましたが何も言われてませんでした。当時のCOROLLAは4315mmでFAMILIAとの差はわずか2cmです。
もっとも、FAMILIAはバンパー代も詰めていましたから、バンパーを除いた全長では大きめだったかもしれません。
全幅は既にこのクラスは全車5ナンバー目一杯でした。
全高は1420mmと当時の国産車で1400mmを超える全高は珍しかったのですが、RVブームは既に起こっていてすぐに1400mmを超えるのが標準となりました。
大きめだったことは事実ですが、なぜ、発表当時のみならず、ずっとデカ過ぎるとブーイングを浴びせ続けたのか? よっぽど評論家の恨みを買うようなことをしたのか、評論家も所詮は感覚だけで物を言っているだけなのか。もし評論家の目がエンジンルームにも行っていたら真実は簡単に分かったはずです。
FF4代目FAMILIAはエンジンルームを極力切り詰めて、その分を全て居住性とトランクに振ったクルマだと。
エンジンルームの大きさだけで比べればクラス最小だったことに気付いた人は一人もいなかったのでしょうか?(手元に残っているMotorFan別冊ファミリアのすべてではちゃんと記述してましたが。)
ちなみに、現在のFF5代目FAMILIAは全長と全高を微妙に小さくして、エンジンルームを大きく取ってキャビンを小さくして出しました。誰も文句は言いませんでした。
現在はマイナーチェンジして全長においてはFF4代目を超えています。そして、NCV(NewCenturyValue)と謳って発表されたCOROLLAは全長4360mm、全高1470mmとFF4代目FAMILIAより大きくなっていますが、評論家は一様に歓迎しています。
なんなんですかね。今のCOROLLAでさえ、エンジンルームが大きく、FF4代目FAMILIAに空間効率の良さには敵わないのに。
FAMILIAの特徴
- 居住性
FF4代目FAMILIAの最大の魅力はやはりその居住性にあります。2000ccクラスのスタンダードを堂々と持ち込み、2605mmのロングホイールベース。800mmを切るフロントオーバハング。フロアを極限まで低く設計するという、全高1400mm未満クルマと同様の設計のまま1420mmまで持ち上げた全高。当時クラス最大の427lのトランク容量。空間効率と言う点で同クラスでこのクルマに勝てるクルマは過去にも現在にも無いと思っています。現行COROLLAではFF4代目FAMILIAよりも大きなサイズとなっていますが、フロントオーバハングが長く、居住性やトランク容量はFF4代目FAMILIAに劣ります。 - 低燃費
直噴エンジンの台頭で色褪せてしまったリーンバーンエンジンでしたが、実力はなかなかのもの。特にこのエンジンでは薄い空燃比で燃やすというよりも、同じ燃料をより多くの空気で燃やす(ポンプ損失の減少)というスタンスに立って開発されており、結果リーンバーン領域のトルクが厚く、よく粘るエンジンになっています。反面それだけではカタログ燃費が伸びないのでハイギアードに振っているのですが、これが極端で、5MTですが1速は普通のクルマの2速。4速で既に普通のクルマの5速よりハイギアード。5速50km/hなんて、アイドリング走行ですよ。なんたって、2速で100km/hオーバーするんのすから。最高出力が5500rpmで出るクルマでですよ。8000rpmも回るようなスポーツカーの話じゃないですよ。それでも、それなりに走るだけのトルクを発生するんだからディーゼルみたいですよね。ちなみに、燃費の最高記録は24km/lだとか。うひょ〜車体重量620kgの我がCERVO MODE君でも最高25km/lだったのに。立派。
Impression
LANTISの弟分だけあって、走り心地も操作性も「剛性感」を感じさせるものとなっています。MTのシフトなんかは希少なロッド式でダイレクト感のあるものでしたし。ただし、LANTISに比べればかなり控えめ。ただ、間違っても快適志向ではないです。だから余計にRS-Lが欲しかった。
エンジンが超トルク志向で筆者の大好きな特性でした。MTなのに2000rpm以下で殆ど事足りてしまう快感。
GS-Lというラグジュアリーグレードでしたが、ラグジュアリーと呼ぶには、雰囲気不足でした。しかも、遮音性能がイマイチだったので。そういう意味からすると広大な居住性の意味が薄れてきてしまいますなぁ。
運転していると何か長い物を引きずって走っている感覚があります。それは、フロントが当時のリッターカー並に短いのに対して運転席以降は2000ccクラスの広大さというのがそんな感覚にさせているのだと思います。STEPWGN等の後に長いクルマを運転するのと似たような感覚ですかね。それにしても、MAZDAはフロントオーバハングを詰めて空間効率を上げるのが上手なメーカですね。DEMIOもそうですし。ただ、最近の安全対策のせいでその特長も失いつつありますね。
上の特徴では居住性についてベタ褒めしていますが、実は後席の居住性には不満があります。それは、シートレイアウトが旧態依然としていたこと。具体的にはシートが沈み込んでいて、それはまるでそれ以前の全高が1400mm未満だった頃と全く変わらない高さにあるのです。従って、天井廻りには十分過ぎる程余裕があるのですが、窓位置が高いこともあって閉塞感が強いのです。では、シート位置を上げればO.K.だったかというと、実は後席頭上の辺りは屋根が丸められていて単純に上げたのでは今度はヘッドクリアランス不足に陥ってしまうのです。つまり、スタイルに影響が出るということです。この辺はもうちょっと研究して欲しかったところですが、これがまたMAZDAらしいところで、絶対的に数値に表れる空間効率等は優れていても人間工学に疎いというか人間不在の設計をしがち。前席の設計は悪くないんだけどねぇ。折角の利点も半殺し。これじゃ売れないか。項目 単位 値 コメント 全 長x幅x高 mm 4335x1695x1420 ホイールベース mm 2605 LANTISと同じ トレッド 前/後 mm 1460/1460 LANTISの弟ですから 室内 長x幅x高 mm 1825x1410x1185 LANTISの弟ですから 最低地上高 mm 150 車両重量 kg 1070 ちょっとヘビー 最小回転半径 m 5.1 フロントオーバハングが短いので実質小回りが利く方 10・15モード燃費 km/l 20.0 MTならでは エンジン型式 − Z5-DEL エンジン種類 − 直4DOHC-Leanbern 内径 x 行程 mm 75.3x83.6 総排気量 cc 1489 圧縮比 − 9.4 最高出力 ps/rpm 94/5500 最大トルク kg-m/rpm 13.5/4000 燃料/タンク容量 l レギュラー/50 タイヤサイズ − 175/70R13