自宅Webサーバーの停電対策と今後

かつて、当たり前のように恵まれていた環境がどんどんと崩れている昨今ですが、電力供給に関しても「停電しないのが当たり前」という時代は終わりそうです。自宅で公開Webサーバーを運営している人にとっては悩みの種ですが、現時点での対策と今後の展望について考えてみたいと思います。

停電の影響

直接の影響としてはやはりサーバーとなるPCの停止が問題になります。ハードウェアとしてもソフトウェアとしても故障の危険性が格段に高まります。特にHDDアクセス中だったりするとHDDそのものの故障、あるいはそこまで行かなくても、データの損傷を引き起こします。

間接的な影響としては、Webサーバーが配信できない状態に陥ると、その後復旧しても、1週間後くらいにアクセス数が激減します。これは、どうも検索結果から除外されてしまうことに起因するようです。当サイトは検索エンジンによって閲覧されるケースがほとんどであるため、その影響は非常に大きく、アクセス数は平常時の3割程度まで落ち込みます。

ノートPCをWebサーバーとして使用する

一般的には電力供給を断たれる前にPCをシャットダウンすることで、システム障害を回避することになりますが、突発的な停電には対応できません。そこで補助的な電力供給システムが必要になります。

ここで、後述するUPSの導入を検討しても良いのですが、「自宅サーバーに向くパーツ構成」にも記述したようにほとんどの場合、巨大なシステムは不要ですので、ノートPCをWebサーバーとして使用できないか検討してみるのも一手です。数百GB以上の大量データを扱う場合には向きませんが、e-SATA端子やIEEE1394端子、USB端子などを経由して外付けHDDを接続するという方策もあります。

なぜそこまでノートPC推しをするのかと言いますと、現時点ではまだデスクトップPC向けのパーツの消費電力が高いことにあります。高い消費電力はそれ自体のコストもさることながら、発熱に直結してシステム故障の危険性を増大させる他、今回の話題である停電などの緊急時にも厄介さを増大させます。

ノートPCを使用すると条件にもよりますが、PCをシャットダウンさせる必要性そのものが無くなる場合があります。当サイトではSony VaioZ (PCG-Z1V/P)をWebサーバーとして使用していますが、約3時間、十数回に渡る計画停電をシャットダウンせずに乗り切りました。

ただし、ノートPCではサーバー的な用途で使われることを想定していないため、高負荷での長期運用に向かないという側面があります。CPU使用率やHDDアクセスが高いレベルで連続すると想定される場合は、ノートPCで耐えられるものかどうか今一度検討が必要になります。

当サイトではSony Vaio Z (PCG-Z1V/P)をWebサーバーとして丸3年間運用していますが、負荷が低いこともあって、ハードウェアは無交換、システム停止はOSの変更や引越しなど数回ありますが、今のところ故障はありません。

UPSの導入

東日本大震災を起因とした計画停電では自分の使用しているISPが存続していました。自宅WebサーバーであるノートPCも存続していました。そうなると、間にある回線終端装置とルーターが存続すれば、停電時でも配信を存続できることになります。

そこでUPSを導入し、回線終端装置とルーターをUPSの配下に置きました。ノートPCは後述の理由により配下には置いていません。

UPSは本来、一時的な対処のため(PCをシャットダウンさせるための電力)に使用されるものであり、ここでの使用方法はイレギュラーなものとなりますのでご注意ください。
UPSの導入に当たっては将来的にATX電源を接続する可能性も考慮して正弦波出力タイプを選択しました。高価になってしまうのですが、UPSからの電力供給に切り替わった時に機器が故障しては元も子もないので。安価な矩形波出力タイプは一般的にActive-PFCとは相性が悪いので要注意です。
(ステップ波は矩形波とパルスの幅と高さ(電圧)が違うだけにしか見えないのでやはり怖い。)

実際UPSを導入して、一番想定外だったのがUPS自身の消費電力が非常に大きいということです。バッテリーから正弦波の電力を作り出すという時点で多くの電力を欠損しています。損失は熱になるためファンが盛大に回り、それがまた電力を消費します。

ちゃんと測ったわけでもないですし、うろ覚えでもあるのですが、実際導入したUPSのバッテリーが12V,7Ahということで84Whの容量があるのですが、回線終端装置とルーターのみ接続した状態で停電後2時間でバッテリー残量が42%、3時間後は10%台ではなかったかと思います。これではとてもノートPCを配下に置くことはできません。幸いうちのノートPCは単体で3時間の停電に耐えたのでUPSの配下には置きませんでした。
(ちなみにうちのノートPCは11.1V,4400mAhということで約49Whのバッテリー容量があります。経年劣化してますけど。)

あと、UPSに使用されるバッテリーは鉛蓄電池が主流であり、容量を使い切ることはバッテリー劣化に繋がりますので厳禁です。そういった意味でも長時間停電時に通常運用のためにUPSを使用する方法はあくまでイレギュラーです。

モバイルチャージャーが気になる

今回の停電時に稼動しているシステムは全てACアダプターで動作しています。ということは、直流が取り出せるモバイルチャージャーを使用すれば格段に効率が改善することが想定されます。問題はそれぞれの機器に適した電圧・電流が供給できるかというところ。容量の大きいモバイルチャージャーだと3.7V,12Ahで約44Whというのもあり、上記UPSの84Whには及ばないものの変換効率を考慮すると良い勝負です。10W程度の機器なら3時間の停電に耐えられるのではないでしょうか。

ノートPCからのUSB給電

残念ながらうちの回線終端装置とルーターは12Vを要求するので無理なのですが、5Vで駆動する機器であればノートPCのUSBポートから給電するという手段を取ることができます。USB2.0なら500mA,2.5Wまで、USB3.0なら900mA,4.5Wまで給電可能です。勿論、その分バッテリーの消費が激しくなるので、より大容量のバッテリーを搭載するノートPCが好ましいということになります。

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IPv6への移行を機会に見直し

今現在でもWiMaxルーターなどでUSB給電可能なため、ノートPCを軸とした停電対応自宅Webサーバーシステムは構築可能ではありますが、通信速度や安定性の点で不安もありますし、うちの場合はIPv6移行あたりを契機に全体を見直す感じでいけたらと思っています。
そのときには省電力、かつ、USB給電を意識した機器選択を行い、ノートPCもより省電力でバッテリー容量の大きいものを選択したいですね。いたわり充電で運用すれば、長期間ノンストップのシステムが構築できるのではと考えています。

2011-05-31

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