軽乗用ハイブリッドは2気筒とともにやってくる
当記事には根拠に欠ける邪推や妄想が混入しています。
事実の確認は各自の自己責任においてお願いします。
震災を機により一層強まったハイブリッドエンジンの需要。世界で見れば小規模とはいえ、日本では4割近くを占める軽乗用車にもその需要は大きい筈。でも、多分そんなに簡単には出せない。
すでにディーゼルエンジンより安いハイブリッド
エネルギー効率が高いという点でエコであるディーゼルエンジンは日本では乗用車としては普及していない。事の発端はさておいたとして、現在の厳しい環境基準を満たすディーゼルエンジンともなると、ガソリンエンジンに対して数十万円(しかも数は2,3のレベルではなく、5,6のレベル)も価格が高くなってしまう。昔に比べて軽油とガソリンの価格差が少なくなっていることも合わせてさっぱり普及する気配が無い。
一方でハイブリッドは需要の高さも相まって、2,3レベルの数十万円高の価格で購入することも可能となってきている。燃料の価格差は無いが、ある程度の発電能力と蓄電能力を備えていることから、震災を機にその需要が一段と高まった。
ハイブリッドはEVへの進化の過程の中の一形態に過ぎないとも言われるが、バッテリーのエネルギー効率を考えると本格的普及はまだまだ先と思われるし、EVになると発電機能は削除される。
ディーゼルの利点を併せ持つハイブリッド
軽自動車は排気量を660ccに制限されているため、動力性能が不足になりがちで、特に一時的な加速や登坂において不足感が強まる。
ディーゼルはターボチャージングが前提となるが、千数百回転という低回転域からガソリンの比にならないトルクを発生できる。また、ノッキングが原理的に無いため、より低速、高負荷な状況でもスムーズに動力を取り出せる利点がある。
動力性能的には大変好ましいエンジンだが、ガソリンエンジンに比べて、大きい、重い、高いという弱点があり、軽自動車というカテゴリーにおいてはそれらの弱点が特に重く圧し掛かる。
その点、ハイブリッドではそのディーゼルの良い点をモーターが担ってくれる。モーターは0回転が最大トルクという低速域向きの動力であるためガソリンエンジンの苦手な部分をうまくアシストしてくれ、結果的にドライバビリティが向上する。
ターボの利点を併せ持つハイブリッド
軽自動車は排気量を660ccに制限されているため、動力性能が不足になりがちで、動力を補うためにターボチャージングを行うことが比較的多い。
ガソリンエンジンのターボチャージングは出力を向上できる一方で、ノッキング対策が必要になり圧縮比を下げる必要が出てくる。結果、ターボの効かない低速域ではむしろ出力が低下するという欠点がある。当然、熱効率も落ちる。
ハイブリッドではエンジンに効率を落とすような細工をせずに、モーターの出力を上積みできる。タービンを付けるよりデメリットが少ない。
設置できる場所が無いかも
軽乗用車は高い空間効率を求められるため、ほぼ直列3気筒横置きFF、もしくはそれに後輪駆動を追加した4WDというレイアウトを取る。また、小回り性も重視されるため、ハンドル切れ角が大きく、結果、フロントタイヤハウスは大きめになる。そして、そのフロントタイヤハウス間にエンジンとトランスミッションがほぼ直列で横置きされる。
ハイブリッドではエンジンとトランスミッションの間にモーターをかませることが多い。つまり、通常のレイアウトよりも幅方向に寸法を必要とする。そこが、ただでさえ幅の狭い軽乗用車ではキツいのではないかと思われる。
いやいや、4気筒だってあったじゃないか、と。過去形ですけどね。4気筒搭載車は小回り性能を犠牲にしたりして結構大掛かりなレイアウト調整を必要としていたのですよ。今の時代にそんな大掛かりな変更はコストに見合わないからやらないでしょう。エンジン部分だけポンと乗せ替えできるくらいでないと。そこで
1気筒減らした幅にモーターを
押し込める。エンジンから見たらエンジン長ということになりますが、2気筒にすると気筒当たりの容積は増えるのでボアピッチが増える可能性があり、その分エンジン長が伸びるのでまるまる1気筒分短くなるわけではないですが、5~6cm位の余裕は生まれるでしょう。それくらいの幅があればモーターを埋め込むこともできそうです。
でも実は、軽乗用エンジンはアジア向けなどの1リットルクラスのエンジンと部品共用していたりして、安易に2気筒とも言い辛かったりもします。全部を2気筒にできるならメリットあるかもしれませんが、ハイブリッドのみ2気筒じゃ単純にエンジンバリエーションの増加になってしまいますので。
でも頑張って2気筒にしてしまった方が良いことがあります。
当記事には根拠に欠ける邪推や妄想が混入しています。
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ハイブリッドは単にモーターとバッテリーを追加しただけでは多くの効果を望めません。過去に出たSuzuki Twinが証明してしまっています。あのレベルだったら、まだエンジン改良だけで頑張った方が良いと思っても仕方ありません。また、軽乗用車は元の車体重量が軽いためにハイブリッド機構の追加による重量増の影響が大きくなります。このこともハイブリッド導入に対するアゲインストになるでしょう。ですので、ハイブリッド導入と同時にエンジンのさらなる効率化を目指すことはほぼ必須事項になります。
熱効率向上
2気筒化は単純に熱効率向上に寄与します。ガソリンエンジンにおいて熱効率が良いとされる排気量は1気筒当たり約300~500cc近辺と言われています。なるほどここ何十年か燃費の良いクルマと言えば大体4気筒1300ccとか3気筒1000ccだったりするわけです。
軽自動車は660cc以下ですので、2気筒だとピッタリ。3気筒では若干細かく分け過ぎになるわけです。
エンジン重量の軽量化
2気筒化は単純に部品点数の低減と軽量化に寄与します。ただし、振動が問題になります。単純にウエイトを置いて固有振動を散らすような手法では軽量化は達成できません。
電子制御バルブの導入
最近のエンジンにおける進化のポイントは電子制御バルブ採用によるスロットルとカムシャフトの廃止です。スロットルの廃止はポンピングロスを減少させます。
電子制御バルブは高速かつ正確に動作するアクチュエーターが必要になるためコストが跳ね上がります。しかし、この影響は2気筒化によって部品点数を減らせるため、ある程度は相殺できます。
バルブタイミングを自由にできることはドライバビリティの向上にも寄与します。かつて、車体重量730kgの初代ワゴンRにすら重荷と言われた660ccNAエンジンがVVT導入を機に900kgを超えるタントやパレットに搭載されてもそれなり走れるようになった実績があります。
アトキンソンサイクルで熱効率向上
自由なバルブタイミングを利用して、より効率向上を目指すならアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)も可能です。ただし、現在の排気量制限においては絶対的な吸入量を減少させることになるので絶対出力は逆に落ちることになります。最近出たMazda DemioのSKYACTIV-Gを見ると良く分かりますね。
ただし、アトキンソンサイクルをやるなら直噴も必要かもしれません。バルブ遅閉じで実現すると吸気が逆流しますので。ポート噴射では空燃比の調整が難しいでしょう。
直噴は高圧マルチポート噴射
ガソリン直噴はかつて20年近く前に流行りましたが、最近になって改めて採用が増えつつある技術です。ただし、昔の直噴では噴射圧が低いことなどから燃料の気化が十分に行われない内に燃焼行程が終了してしまい、酷いと出来の悪いディーゼルのように排気管から黒鉛がもうもうと垂れ流されるという代物でした。
現在はガソリンエンジンであっても高圧マルチポート噴射などディーゼルエンジンで培った技術が活かされています。ただし、こちらもコストが非常に高いため、気筒数を減らして部品点数を削減することに大きな意味があります。
150万円程度の価格で実現可能か
装備品の差など細かいところまで見ていないので精度は悪いのですが、Honda Fit Shuttleがハイブリッド化に+20万円。Mazda DemioがSKYACTIVに+11万円。となると、これらの組み合わせも標準のガソリンエンジン車+30~40万円程度で実現可能になりそうです。
ハイトワゴンタイプの軽乗用車はベースグレードで100万円内外になりますので、150万円程度での実現も可能になりそうです。
車体重量は+50kg程度?
車体重量についてはどの程度バッテリーとモーターを強力なものにするかが大きなファクターになります。それは同時にコスト増大要因にもなりますから安易に強化できるものではありません。
一方でガソリンエンジンの効率向上はある程度最大出力を抑えることによって実現できることでもあります。ただ、軽自動車では元々出力余裕がありませんので、モーターによるアシストを前提にしないと効率向上に向けた改良は行いにくくなります。
軽のカテゴリーではトレードオフがより厳しくなるので最適化の作業は大変なことになりそうです。必要な出力を得ようとすると、効率が落ちるか、重量が嵩む。重量が嵩むと必要な出力がさらに増す。効率が落ちるとハイブリッドの意義が薄れます。
車体重量の増加は衝突安全性にも影響しますから、そうそう容認できるものではありません。そうなると許容できる重量増加は50kg程度までになるかと思います。これは軽自動車で4WDの車両がFFに対して増加する重量にほぼ匹敵します。
リヤスライドドアを諦めれば-50kgくらい、リヤシートスライドを諦めれば-20kgくらいになりますので、この辺りと引き換えにハイブリッド化することも可能かと思われます。