KR1_02 軽1Box キャブオーバーバン
軽1Box キャブオーバータイプ バン。現車で例えると、「スバル ディアス」。
スペック (Spec)
全長×全幅×全高(mm) | 3395×1475×1900 |
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荷室長×荷室幅×荷室高(mm) | 1960×1335×1525 |
4人乗車時 | 1015×1335×1250 |
オーバーハング[前/後](mm) | 900/595 |
ホイールベース(mm) | 1900 |
トレッド[前/後](mm) | 1310/1310 |
最低地上高(mm) | 150 |
乗車定員(名) | 4 |
車両重量(kg) | 960 |
最小回転半径(m) | 3.6 |
タイヤサイズ | 145/80R12 |
エンジン型式 | 直列2気筒横置インタークーラーターボディーゼル |
内径×行程(mm) | 69.6×86.6 |
総排気量(cc) | 659 |
圧縮比 | 14.0 |
最高出力(kW(PS)/rpm) | 40(54)/4800 |
最大トルク(N・m(kg・m)/rpm) | 88(9.0)/3000 |
燃料消費率JC08モード(km/l) | 25.0 |
JC08モードの重量区分 | 856~970kg |
標準価格 | 120万円 |
スタイリング (Styling)
特筆すべきところは何もないです。
空間効率こそ1Box キャブオーバータイプの最大の特長。ならば、それを活かすべく余計な装飾は付けません。
逆に言うと、下手に装飾すると利点が薄まる。利点が薄まるとデメリットが目立ってくるのでできません。
コスト的にもアップアップです。
パッケージング (Packaging)
軽1Boxカーは知恵の結晶であり、経験の積み重ねの成果です。
大きな荷室を確保するために、無駄なモノを徹底的に省き、切り詰める。特に長さ方向においては、「クラッシャブルゾーン」+「運転席」+「荷室」+「ハッチゲート」がまさしく全長3395mmなのであって、各社とも既に工夫の余地が無いほど、荷室を拡大し、その他を切り詰めています。
従って改めて空想で側面図を書いてみても、特別に優れた点を作り出すことは出来ません。特に長さ方向、幅方向においては現車と同等と見て良いかと思われます。
高さ方向については若干有利にしています。
これにはリヤミッドシップエンジンということもありますが、それだけでは「ホンダ バモス(ホビオ)」やRRである「スバル サンバー」となんら変わりません。
機械的4WDを諦めて、より低いフレームを構築することで、低床化しています。
低床を生かすように、上げ底板と共にリヤシートを折り畳んで立てれば、高さ約1525mmの高い荷室が約800mmの長さに渡って確保されます。
上げ底板をそのままにリヤシートだけをひっくり返して格納すれば、荷室床長約2010mm、荷室高約1250mmの広大な直方体に近い荷室空間が得られます。
また、二重床となり、高さ約240mm以下の物であれば下側に積載することも可能です。
荷室の後半については、現車の軽1Boxカーと同様にフラットフロアとし、荷室床高さを地上高625mmに設定していますが、これはちょっと無理がある値かもしれません。
フラットフロア化にあたって、一番の障害となるのがタイヤハウスです。タイヤハウスの上面に床面の高さ合わせているのです。このタイヤハウスはサスペンションが一番縮みきった状態でもタイヤを擦らずに済むだけのクリアランスを必要とします。荷室の床面を下げるということは、このクリアランスを減少させることに他ならないわけで、サスペンションのストロークを縮み側で短くせざるを得ず、最大積載時などで走行振動により底付きを起こしやすくなるか、よりバネを固くせざるを得なくなります。このクリアランスを広げる一つの手法として、タイヤ外径を小さくするという方法がありますが、それでなくても重い車体に重い荷物で非常に荷重が掛かりますので、それに耐えうるタイヤにしなければなりませんし、タイヤ外径を小さくすることは乗り心地の点で不利です。この車種はバンですので、荷物への振動の点で不利と言った方が良いでしょうか。
いずれにしろ、トレードオフだらけの中でのせめぎ合いです。
とりあえず、ここ最近の傾向としては、比較的荷重の小さい乗用モデルでは乗り心地優先の大きめのタイヤ、荷重の大きい商用モデルではクリアランス重視で小さめのタイヤとなっているようです。また、1Boxではない普通の乗用モデルでは若干タイヤサイズに拡大傾向が見られますが、1Boxでは前述の通りトレードオフが多過ぎて据置き傾向です。
軽1Boxカーは衝突安全性能の向上を主題とした軽自動車規格の変更('98)において、そのほとんどが前輪を運転席の前に出すセミキャブ化を行っており、フルキャブのまま対応したのは「スバル サンバー」だけでした。(が、それも'12生産終了となります。)
(トラックはまた事情が異なります。)
セミキャブ型では衝突安全性能の向上とイメージの向上、前席のレイアウト自由度の向上を手にしましたが、フルキャブと同等の荷室を得るためにはどうしても前輪タイヤハウスの大きな干渉を許容しなくてはならず、乗降時にタイヤハウスを避けるように足を運ばなければならない、足の置き場が車体中央寄りにしかなく、まっすぐ座れないという問題があります。
フルキャブ型では前席のレイアウトは一部タイヤハウスの上になるため、クッション厚み分を追加した高さにまでシートポジションを高くしなければならないとともに、乗降時にもタイヤハウズを越えて座らなければならず、お尻を持ち上げる必要があります。
ですが、足先の空間で邪魔になるものはステアリングシャフトの鉄棒だけであり、その点では有利です。
足を引こうとしてもタイヤハウスが邪魔でどうしても足を投げ出す姿勢しか取れないという弱点もありますが。
やはり、まっすぐ座れるというのは大事だと思いますので、衝突安全性能がきちんと確保できるのならフルキャブタイプが良いと思います。
衝突安全性能の注目度が高まる中、全ての1Box車がセミキャブタイプに転向するかと思いきや、「トヨタ ハイエース」や「日産 キャラバン」、「マツダ ボンゴ」などフルキャブタイプを続行する車種も幾つかありました。
セミキャブタイプが悪いわけではありませんが、フルキャブタイプと同等の荷室を確保するにはレイアウト上の無理を感じざるを得ません。
フルキャブタイプが衝突安全性能上不安視されるのはやはり、前席周りの強化が構造上行いにくいところにもあるかもしれません。足元については車体底面に持つフレームを最前端まで延ばして車体潰れを防ぐようにできますが、それより上の部分は強固な骨格で囲うことが難しく、うまいこと足元の衝突対策用フレームにぶつかってくれなければ、肝心のキャビンは早々に潰れて、生存空間を確保できないということになりがちです。
その一因として、1Boxでない普通の乗用車タイプでは一本キッチリ筋を通せるサイドシルが、フルキャブタイプではフロントタイヤが分断してしまって成立しないことにあります。
サイドシルとピラーで囲えばキャビンを強固にしやすいですが、フルキャブタイプではサイドシルがピラー間を強固に結べません。
対策として、地上高850mm~1100mm辺りの前面と左右面に強固なフレームを構成し、Bピラーにつなげてキャビンの潰れを防止します。
実際には左右面はドア開口部となってしまっているため、左右面のフレームはドアにビルトイン、すなわち、「ダイハツ タント」などに見られるピラー内蔵ドアと同じ発想で、ピラーを横方向にしたものと思っていただければ良いかと思います。
このビルトインフレームはサイドインパクトバーの役割も果たします。
当初、前下方向の視界向上のためにフロントドアのガラス面の前方を一段下げていたのですが、この構造のために取りやめました。
ウインドウグラフィクスで唯一のアクセントだった部分が平坦になってしまったので、ものすごく特徴の無い平凡なスタイリングになりましたが、超実用車ですので、スタイリングに色気を出すよりも、合理性を素直に追求したいところです。
例えば、三角の目隠し(よくドアミラーが搭載されるところ)すら無くしたシンプルなフロントドアのウインドウ。Aピラーとラップさせた太いドアサッシとドア形状、ウインドウの昇降軌跡を考慮した結果、無くしても成立するようになりました。
全てのウインドウは装飾のために無駄にウインドウ面積を広げることも無く、ブラックアウトなどもしない単純なはめ込み形式として、軽量化を優先しています。
ノーズの出っ張りはミニマムです。見た目の安心感を得るためにノーズを長く取る傾向にありますが、荷室空間が変わらないなら削られているのは前席のキャビンスペースです。
衝突時にキャビンが潰れないことは重要ですが、一部潰れても生存空間が確保されていることは実用上もっと重要なことです。
衝突安全性能というのは衝撃を人間に伝えない、和らげる性能のことです。衝撃の瞬間的で巨大なエネルギーを長時間で緩やかな変化に均していく。そのために衝突対策用のフレームはわざと意図した速度で潰れます。そして生存空間を守るべきところはひたすら強固にする。しかし、強固にするといっても、衝突のエネルギーが大きいとやはり潰れます。
そのときに、元々の居住空間が広い方が生存空間を確保しやすい。そう考えて、バンパーやノーズの大きく張り出させて見せる安易な手法で済まさず、しっかりした骨格に広い居住空間(⇒生存空間)を構築しています。
小さいノーズでも、中にはしっかりフレームが仕込まれていますので、デザイン代など無く、一切スラント(傾斜)していない張り出し方で規格内寸法目一杯に張り出しています。
前席足元周りについても、超大型バンパーで視覚的安心感を訴求しつつ、やはり内部にフレームをしっかりと構成します。
エンジン (Engine)
KR1_01型と同じですが、イニシャルコストも意識してハイブリッドなしを標準としています。
影響を受けた現車 | スバル サンバー |
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参考にした現車 | ダイハツ ハイゼット スズキ エブリー |
近しい現車 | スバル サンバー |