HP ENVY TouchSmart 15
日本HP(ヒューレットパッカード)のノートPC ENVY TouchSmart 15 を試用することができましたのでレビューしてみたいと思います。
据え置き使用がメインとなるノートPCでは主流となる15.6インチにタッチパネルが搭載され、ボディもスリムな印象です。
お洒落な雰囲気が漂っていますね。
筆者はこのくらいの大きさのノートPCを仕事用に使用しているため、このPCに触れるまで、15.6インチの据え置き型が作業性という点でどのように進化しているか、という期待感を持っていたのですが、どうやら大きな誤解をしていたようです。
そうです、このPCはお仕事PCとは方向性が異なるのです。一言で言ってしまうと、高級エンターテインメントPCなのです。
それでは汎用のノートPCとどのように違うのか、これから詳細に見てみましょう。
いきなり何かと思われるでしょうが、これ、バッテリーを装着するところの本体側の写真です。
黒の内側に派手な赤。
まるで、中学生の学ランの内側を覗いたかのような気分です。(う~ん、歳がバレる)
冗談はさておき、こんなところをお洒落にしてどうするの? って一瞬思ってしまいますが、本来の目的はこちら、
お分かりいただけましたでしょうか、キーボードの縁に赤いライン。
構造部材を着色してデザインにも利用しています。
コストとの兼ね合いも考えられたデザインです。
そして、
うはーっ、お洒落。
バックライトキーボードです。
キーボードイルミネーションといった感じですよね。
お洒落なだけでなく、暗い場所での操作性にプラスですね。
LANコネクタはなんと、
リトラクタブルです。
写真では説明用に指先で広げていますが、実際にはLANケーブルをそのまま挿し込むことができますので実用上不利な点はありません。
しかし、ここでもデザイン重視であることが伺えるかと思います。
実際には本体の厚みがそれなりにあるので、普通のコネクタでもイケるはずなのですが、薄く見せるデザインのためにこのような形になっています。
そして、極めつけが、
上の銀のラインは液晶画面側、下の銀のラインとその下の黒い部分が本体側になります。
ブランドものですよ、っていうアピールを感じますね。
他にも随所にデザイン重視であることが伺えるのですが、デザインという観点だけで話を進めていくのは困難なので、そろそろ違った観点で見ていきたいと思います。
さて、この HP ENVY TouchSmart 15 には4つのスピーカーとサブウーファーが搭載されています。
まずはキーボードの奥に点々と穴の空いているエリアが大きく取られていますが、この中にスピーカーが2つあります。
そして、背面には、
写真では左やや下に「b」の文字、「Beats Audio」というブランドの頭文字のロゴがあります。
これがサブウーファーです。普通に置いている状態では右側中央よりやや手前の位置にサブウーファーがあることになります。
そして、
大人の事情で片側しか写していませんが、写真では一番下の2本のスリット。ここが裏面のスピーカーで左右対称に2つ設置されています。
普通に置いた状態では手前側で、ここから本体の形状を絞り込んでいますので、下の机に反射して聞こえるという形になるかと思います。
さて、肝心の音の方ですが、HP ENVY x2 のときとは違って、こちらは「Beats Audio」を有効にすることを前提としたチューニングがなされているように感じました。
4スピーカー+サブウーファーという贅沢な構成ではありますが、ノートPCという小さな筐体の中に収めているものですので、スピーカー単体で充分な再現能力は得られません。
「Beats Audio」をOFFにしている状態ではどうしても貧弱になってしまう音が、「Beats Audio」をONにすると、より大きなスピーカーで再生しているかのような感じになります。
変な味付けをされている感じはなく、自然な感じに近く、素直に好感が持てます。
PC本体のスピーカーで再生する場合は間違いなく「Beats Audio」をONにした方が良いと思えます。
一方、外部スピーカーやヘッドホンで聴いた場合ですが、こちらは「Beats Audio」がOFFの状態でも既に良好な音質です。
「Beats Audio」をONにすると、各パートの音がそれぞれ明確に聴こえるように感じられる一方、音の出っ張り/引っ込みが激しくなるため、筆者は少々気持ち悪くなってしまいました。
充分な再現能力を備えるスピーカーやヘッドホンで聴く場合は「Beats Audio」OFFの方がオススメです。
また、試しませんでしたが、ビデオチャット等の音質を良くするために録音環境の設定もできるようです。
画面はタッチパネル付きの15.6インチ、解像度は1920×1080のフルHDです。
恐らくTN液晶と思われます。
上の方から覗き込むように見ると色味が変わったり、眩しくなったりしますが、普通に正面から見ると結構まともに見れます。
(酷いTN液晶は真正面から見ても上の方と下の方とで色味が明確に変わって見えます)
筆者がタッチ操作に慣れてきたのかと思ったのですが、標準では文字の大きさが125%に設定されていました。
HP ENVY x2 のドットピッチが約0.188mm。
こちら、HP ENVY TouchSmart 15 のドットピッチは約0.179mmと余り変わらないうえに、文字の大きさ125%ということで、こちらの方がタッチエリアが広い傾向にあったのですね。
そのせいか、タッチ操作ミスは少なく済みました。
しかし、この、文字の大きさ125%というのは、随分昔からWindowsの機能として存在するものの、現在に至ってもなお対応できていないアプリケーションがあったりします。
と言いますか、そもそもWindowsそのものの設定画面でも対応できてなくて表示しきれないではみ出ちゃって調整も効かないという画面が残っているくらいです。
できれば100%に戻しちゃった方が良いですね。筆者も途中から100%に戻して使っていました。
この画面を最大限に開いた状態で、
横から見ると十分に開けているように見えますが、個人的にもうちょっと開いてほしいなぁという印象です。
ただし、それは、作業机で姿勢を正して上から見下ろすというお仕事スタイルだったからかもしれません。
右側面の写真が出ましたので、ついでに端子類を見ていきましょう。
奥側から、ACアダプタの差し込み口、小さな丸はそのインジケータ、有線LANコネクタ、2つの小さな丸がそのインジケータ、USB3.0ポート2つ、そして、マイク入力とヘッドホン出力を兼ね備えた3.5Φのオーディオジャックです。
左側面も見てみましょう。
奥側から、ケンジントンスロット、冷却ファンの排出口、HDMI、USB3.0ポート2つ、SDカードスロット、小さな丸がHDDアクセスランプと電源ランプです。
トータルで4つもあるUSB、しかも全てUSB3.0というのが嬉しいですね。
USB3.0は単に速いだけでなく、電源供給能力も強化されていてUSB2.0の0.5Aから0.9Aに増強されています。
そして、そのうち1つ、左側面一番奥のポートはPC本体が起動していないときでも電源供給に使えるポートとなっています。
(稲妻マークが付いています)
背面は上記の「HEWLETT-PACKARD」ロゴとヒンジのみです。
また、手前側は非常に薄くなっていて、拡張端子類は一切ありません。
それでは、インジケータが光っているところを見てみましょう。
まずは、ACアダプタ、
充電中はオレンジ色に、充電が完了すると白色に光ります。
続いて、有線LAN、
上はコネクトした時に、下は通信している時に光ります。
そして、左側面のインジケータ、
奥がHDDアクセス時に光ります。手前は電源投入時に点灯、スリープ時には約1秒間隔で点滅します。
キーボード面にはまとまったインジケータエリアは無く、それぞれ個別の場所が光るようになっています。
まずは電源、
点灯パターン、および、点滅タイミングは左側面のものと同じです。
Wi-Fi(無線LAN)はファンクションキーのところが光ります。
F12 キーの右上部分が、フライトモードON、つまり、Wi-Fiオフという状態がオレンジ、Wi-Fiがオンになっているときは白色に光ります。
Caps Lock時
caps lock キーの右上部分が白色に光ります。lockしていないときは消灯しています。
Num Lockの方はなぜかインジケータがありませんでした。そういえば、Scroll Lockはキーそのものが見当たらなくなっていますね。
据え置き使用中心のノートPCともなると、重量への興味は薄れるのですが、一応量って見ました。
とはいえ、手持ちのクッキングスケールでは1kg以上の重さを計量できないので、本体は量っておりません。
カタログ値によると約2.56kgとのことです。
ACアダプタですが、本体のみではカタログ値が公表されていて、約480gとのこと。
手持ちのクッキングスケールでは470g弱を示しました。(画像左側)
コードのみだと120g弱。(画像中央)
合計で約575gって、精度が良くないのがバレてしまいましたが、いずれにしろ持ち運びには適しません。
120WというACアダプタとしては高出力なタイプですので、無理もないところです。
バッテリーは、約330g。
6セルなので妥当なところです。
余談ですけど、
11.1Vで5400mAhとある一方で、62Whとも記載されています。
11.1×5.4≒60、うーん、どういうことなんでしょうね。
基準が違うのかな?
キーボードの操作感は、
キーピッチは約18.7mmということで、標準である約19.05mmより若干小さいのですが、これが、HP ENVY x2 の約18.9mmとも異なる微妙なサイズ差となっています。
キータッチに高級感は感じられませんが、操作感は概ね良好です。
手前側が結構薄くなっていて、段差が少ない点はGoodです。
ただ、テンキーが付いていると、どうしても[delete]キーや[back space]キーが押しづらくなってしまいますね。
ファンクションキーは画面の明るさ調整や音量調整などの方がデフォルトとなっていて、従来のファンクションをしたい場合は[Fn]キーを同時に押す必要がありますが、これはBIOSで切り替えが可能です。
一方、大きなタッチパッドは一体型で残念なタイプ。
調整でどうにかできれば良いのですが、クリックが押しづらい上にポインタがズレてしまったり、キーボード入力中の誤作動が頻繁に起きてしまいました。
テンキー右下の指紋認証装置は試していませんが、装置の左端がオレンジや白に光ります。
アイドル時の消費電力が、
10W、バックライトの輝度によっては9W~14Wとこのクラスとしては優秀です。
これにより、カタログ値で約8時間のバッテリー駆動時間を達成しています。
バッテリー駆動時間のテストはしていませんが、バッテリーのみで暫く使ってみたところ、バッテリーの減りは遅く、充分に持ちそうな感じではありました。
流石Haswellと思わせてくれる部分ですね。
Haswellといえば、このマシン、CPUになんとIntel Core i7-4700MQ をおごっています。
4Core 8Thread で 2.4GHz。
TurboBoostで最高3.4GHzまでブーストします。
筆者の所有CPUは最高性能のものでノートPCはCore i3 380M、デスクトップでAMD A6-3500だったりしますので、もう、垂涎モノです。
WEI(ウインドウズエクスペリエンスインデックス)を見てみると、
CPUはなんと7.9! です。
グラフィックスが5.1となっていますが、これはCPU付属のGPUが使用されているため。
ゲーム用グラフィックスではdGPUとして搭載されているNVIDIA GeForce GT 740M が使用されるため6.6に跳ね上がります。
メモリが5.9なのは4GBのメモリを1枚だけ搭載している状態であるためで、2枚搭載してデュアルチャネルアクセスになれば数字は跳ね上がるはずです。
プライマリハードディスクが5.9なのはHDDを搭載しているためです。
CPUやGPUを奢っている一方で、SSDではなくHDD搭載であるのは何故かというと、それは、このマシンがエンターテイメントPCであるため、といえます。
ゲームや映像再生、音楽再生などの用途を最重要視しているため、ストレージは速度よりも容量を優先してHDDを搭載しているものと思われます。
多くのノートPCでは廉価版として320GB辺りのHDDを搭載したモデルを用意したりしますが、HP ENVY TouchSmart 15 では最低でも750GBのHDDが搭載されます。
これでは、SSDにするにはコストが掛かり過ぎます。今のところHDD搭載は仕方がないところなのです。
しかし、後述しますが、やはり速度の点でハッキリと不利です。
そこで、このマシンでは1TBのHDDに24GBのキャッシュSSDを付けた構成が選択できるようになっています。
その構成を選ぶ場合はメインメモリの最大容量が8GBに制限される点が注意点とはなりますが、できればこちらを選択したいところです。
パフォーマンスの評価を実行中、Direct3D 10のときに最大で82W、CPUのパフォーマンス測定時には最大で67Wを表示しました。
写真はその瞬間を捉えられていませんが(^^ゞ
バッテリー充電中だったりすると100Wを軽々と超えてきます。USB等への電力供給などを考慮すると120WのACアダプタは必然、しかも結構ギリギリですね。
50W程度の消費電力が数秒継続するとファンの回転数が高まってきます。
それは良いのですが、低負荷な状態が幾ら続いても、このマシンはファンが停止しません。
(Windows上では「CoolSense」、BIOS上では「Fan Always On」というFAN Controlの設定があるのですが、どのように設定しても止まりませんでした。)
そのこと自体も別に良いのですが、ファンが最低回転を保っている状態であっても、少々煩いのは残念な点です。
隙間風が吹く、気密性、防音性に低い木造家屋の部屋であっても、窓を閉め切ればファンの音が耳に付いてしまいます。
音楽再生などすれば分からなくはなるのですが、もうちょっと静かにしてもらえると嬉しいです。
ちなみに底面を浮かせてあげると吸気音は減るのですが、それでも少々煩いです。
CPUをシングルスレッド処理でぶん回しているときは、
見事にターボブーストが効いて、3.4GHzに近いところまでクロックが上昇します。
CPU使用率が15%となっているのは8Threadあるうちの1Threadだけが100%負荷となっているためです。
ちなみにこのときの消費電力が最大で36W。
なかなかの省電力性能です。
全スレッドに負荷が掛かると、
こちらは全スレッド100%負荷ですが、この場合でも3.17GHzまではブーストが効きました。
(WEI(ウインドウズエクスペリエンスインデックス)CPU処理実行中の最大値です。負荷内容によっては同じCPU負荷100%でもブーストの掛かり方は変わってきます)
一方、Disk性能の測定に入ると、
見事なまでに「待ち状態」になってしまっていて、CPUは遊びまくっています。
それでも、全体処理としては高負荷であることが分かっているせいかブーストが掛かっちゃって3.3GHzを超えていますね。
しかし、やれることが「待ち」ばっかりなので消費電力は、
25Wというありさまです。
CPUだけが慌ててもしようがないのでは? って気がしてしまいますね。
さて、このマシンを快適に使うためにはコツがあります。
それは、極力シャットダウンしないこと、アプリケーションも終了させないこと、にあります。
つまり、アプリは起動させっぱなしで切り替えるだけ。
使用しないときはスリープさせる、ということです。
タブレットPCやスマートフォンのような使い方の方がこのPCには合っているのです。
その理由は、「遅いHDDのせい」、ほぼこれ一点に集約されます。
アプリケーションを起動するときに無反応状況に陥ることが多々あります。
実は無反応なのではなくてHDDのアクセス処理待ちで遅れちゃっているのですが、HDDのアクセスインジケータが側面にあるため、意識的に見ないと単に無反応だと思ってしまいます。
それだけではありません。
Windows起動時に画面が表示されるのは比較的早いのですが、その後もちょいちょい裏でサービスが動きます。
その度に、裏処理のHDDアクセス待ちのせいで、操作に支障がでるのです。
最初のうちはレビュー記事の編集をこのマシンで行なっていたのですが、IMEの反応がちょくちょく止まったり、確実に打ったはずのキーを取りこぼしたりといったことが、数十分というレベルで起こり続けました。
もちろん、もっと長期間使い込んでシステム全体の最適化が進めば、これほど反応が悪くなることは減ってくるはずです。
しかし、このHDDアクセス待ちによる印象の悪化はちょっとこのマシンが可哀想になるくらいです。
アプリが起動しきってしまえば、裏で動くサービスのHDDアクセスが少なければ、爆速マシンなのです。
しかし、HDDアクセス待ちのせいで、本来なら処理性能では比較してはいけないほど格が違うはずのAtom搭載のENVY x2の方が操作感が良いという逆転現象を生んでしまっています。
ですから、このマシンでは極力無用なHDDアクセスを起こさせないように、立ち上げっぱなしでシャットダウンではなくスリープにする、という使用方法が合っているのです。
ゲームやコンテンツ再生といった用途では、恐らく、上記のような支障は出ないと思われます。
Windows8のチューニングや方向性とHDDとの組み合わせというものが作業に不向きな状況を作り出してしまったのでしょう。
起動時に十数秒に渡って画面が真っ暗な時間が生じたり、シャットダウン時には早々と画面が暗くなるのに、HDDアクセスがやはり十数秒に渡って続いてからやっと電源が切れたり、というのもWindows8とHDDの組み合わせによる弊害なんじゃないかと思います。
(余談ですが、電源が切れる直前に消費電力が60W以上に跳ね上がります。dGPUのシャットダウン処理なんでしょうか?)
慣れれば良いのでしょうけど、Windows7まででは見たことの無い動きだったので少々面食らいました。
というわけで、このPCはエンターテイメント向けなのであって、このままでは作業用には不向きと結論付けました。
もし、筆者が長期に渡ってこのマシンを使い続けるのであれば、自己責任でシステムをSSDに換装します、間違いなく。
予めSSD搭載モデルも用意して欲しいような気もしますが、このPCの方向性を考えるとシステムとデータのパーティションが別れて2つになってしまうことも好ましくないのでしょうから、一般的にはやはり、現存する1TBのHDD+24GBのキャッシュSSDの構成がオススメです。
できればメモリも8GB(4GB×2)にした方が良いです。
せっかく上等なCPUやGPUを標準搭載していますので、それらがより活きる構成で使いたいものです。
最後に、このマシンのというよりはWindows8の感想になってしまうのですが、起動しただけで、もうニュースや天気予報が見られるようになっていたり、流行りの検索ワードで検索ができたり、といったTVに近い、受け身寄りのコンテンツ消費をするスタイルで使用する分には大きく進歩していると思います。
タブレットでするようなことがノートPCでもできてしまう。
この狙いはある程度達成できているのではないかと思います。
実際、あまり考えずにスイッチ入れて、気の向くままに画面を触れば良い、というのは非常に楽なことだと思いました。
ただ、その反面、そういう使い方ならタブレットで良いんじゃね、という感じがしたのも事実です。
そう思うと、昨今のPC市場がタブレットやスマートフォンに食われているという現象は致し方ないのかなとも思います。
そうなると、「PCじゃなきゃ」という理由付けが欲しくなるのですが、それがこのマシンの場合は圧倒的な性能とストレージ容量でタブレットでは不可能なコンテンツ再生やゲームができる、ということのなのかな、と思うわけです。