UbuntuStudioメイン運用1年経過

早いものでメイン PC のメイン OS を Ubuntu Studio に変えてから1年1ヶ月が経過しました。
それまでも、自宅 Web サーバーなどで Linux を利用してきた経験(FreeBSDもあるんですよ〜)はあるのですが、メイン使用のデスクトップ OS として Linux をこれだけ長く運用し続けたのはこれが初めてのことになります。

以前から何度か(十何度か?)Linuxをインストールしてみては軽く弄った程度で止めてしまったり、あるいは、起動不能になってしまって断念したりといったことを繰り返していました。PuppyとかVineとか……
また、主にWebサーバー周りのシステム開発やフォント作成などのためにVirtualBox内にUbuntuServer+デスクトップ環境を保持していたりしました。
ですので、サブ的な使用という面では5年以上(少なくともUbuntu12.04LTS辺りから継続しているので)の運用実績はあったのですが、必要がある部分でしかLinuxを使わず、メインはあくまでもWindows。という状態がずっと続いていたわけです。

ことの転機はやはりWindows10でしょうか。
一言で言って『傍若無人』でしたよね。今は多少はまし(とか言いながら勝手に個人データを消すという暴挙をやってのけて最新の大型アップデートが配布停止状態に陥っていますが)になったのかもしれませんが、それまでなるべく広く個人のカスタマイズを許してきたWindowsが一転、あれもこれも『Microsoftの流儀に従え』とばかりに勝手な設定変更と設定手段塞ぎ。酷い退化でした。
Windows 10が実際に発売される前は Windows Mobile と統合されるという噂もあって、モバイルの環境が Windows レベルに向上するのであればもう Windows の天下なんじゃないかと思ったものでしたが、蓋を開けてみれば、Windowsの機能をモバイルOSレベルにまで低下させるという統合であって、しかも肝心のモバイル側が頓挫。残ったのがデスクトップ環境にモバイルの流儀を強要するカスタマイズできないOSでした。
しかも、モバイル同様、何よりもデータ収集を優先するという思想。PCの性能や電力の大半をデータ収集のために奪っていき、ネットブック等の非力なPCを根こそぎただのデータ収集マシンと化させた酷いOSでした。

こんなんもう多すぎて足りなくなるなんてことはないだろうと思っていた16GBのRAMをあっさりと食いつぶし、メモリ不足のアラートを頻発(いや決してウイルス感染しているとかそんなんじゃないですよ。開発作業とかしていてブラウザ何種類も開いてIDE動かしてVirtualBoxで仮想OSとか動かしたりしてたら16GBでも手狭になってきますやん。)
筆者としては珍しく頑張って高性能(筆者の歴史の中ではかなり踏み込んだ)CPU(Core i5-4570S)を選択したのに、なぜかすっきりしない操作感。
しかしそれでも、不満があっても後方互換性はどんどんと切り捨てられていくので古いOSに戻るとそれはそれで不便が増えます。
そんな中、さらに衝撃的な体験が起こります。

デル株式会社

VirtualBox上で動かしているUbuntu上のInkscapeの動作が、メインOSであるWindows上のInkscapeよりも明確に速い!
当然、VirtualBox上の方が性能的に不利なはずで、CPUもメモリも本体のフルまで割り当てていないハンデ戦のはずなのに、です。
筆者が気まぐれでUbuntu上のInkscapeを動かしてみたりしなければ一生気付かなかったかもしれないこの偶然の体験で、筆者の中に『本気でLinuxメインに移行』という構想が持ち上がります。

それまでの個人的な経験からすると、サーバー運用としてのLinuxは非常に信頼の置けるものでしたが、デスクトップ環境は『ちょっとしたことですぐに壊れて再起不能』というイメージがありました。
でも、恐らく、これは筆者が本気で使い続けようと努力しなかったせいであり、本気で使えば付き合い続けられるはず、とも思いました。
というのも、何やかんやで比較的簡単と言われるWindowsでも問題は度々起こり、余計なバッドノウハウを勉強しなければならなかったり、と、それなりに苦労させられてきているんです。
それと同じ労力をつぎ込めるならデスクトップLinuxだってイケるはず!
それに、Linux移行が成功すれば、PCを一新したくらいの明確な性能アップが見込めるのです。(やや大げさな表現ですが、買い替えを先延ばしに出来たのは確かです。)
そうして、メインPCのメインOSをLinuxへ切り替える作業をしたのが2017年の10月でした。

実際、Linuxならではの流儀とか、突然のフリーズとか起動不能とか、それなりの洗礼は受けました。
ですが、今回は本気で使い続ける覚悟の運用。粘り強く対策を講じていきます。
するとどうでしょう。案外使えるものです。
といいますか、個人的には一長一短あるもののトータルで見て確実にWindows10のときよりも使い勝手は向上しています。
今回の移行は成功しました。とりあえず、当面メインPCのメインOSはLinux系で続行するつもりでいます。


細かい話をすると、Xfceのパネル周りが少々不安定で、何度かぶっ壊れて一から再構築し直すハメになったりしています。天気の表示も便利なのですが、ちょくちょく設定がすっ飛んで空になってしまう病が発生するのでその都度設定し直しというのも若干時間を取られます。
が、それ以外は概ね順調です。あ、でも、そういえば、18.04でSambaがぶっ壊れて半年間他のWindowsPCの共有フォルダ繋げなかったな。(VirtualBox上のWindows立ち上げて凌いでました。)
一度、フリーズしてレスキューモードのお世話になったりもしましたが、過去何度も体験してその度に挫折するきっかけにもなった『システムが起動不能に陥る』と症状も(あったかもしれないけど忘れました)多分無く済んでいます。
昔に比べれば随分と安定性が増したと思いますよ、デスクトップLinuxも。
それでも、細かい不具合みたいなものはちょこちょこ起こるのですが、まぁそういうのはWindowsでもあることですし、むしろ、最近のWindowsは不具合(というか検証不十分だったり設計退化だったりですが)増加傾向ですからね。どっちもどっちレベルです。
あ、ちょっと大きな後退面としまして、ストレージのフォーマットをNTFSからEXT4に変更したらHDDの空き容量ががっくり減りました。具体的な数値は忘れましたが、2TBちょいのデータを移行して200〜300MBくらい空き容量が減った気がする。

その一方で、これは単に幸運だったということでもあるのですが、ハードウェア周りの調整での苦労がほとんど無かったというのはLinux、特にUbuntuStudio導入での結構な成功ポイントでした。
ドライバ導入とか気にせず、筆者の使っているハードが全て認識していたのです。ペンタブレットとかE-MU 404USBとかのやや特殊系のハードもオールOKでした。
一点だけ苦労したのは、ポインティングスティック付きのキーボードでポインターの動きが緩慢過ぎてその調整に手間取ったってところでしょうか。
現在はトラックボール付きのキーボードを使用していまして、こちらは全くスムーズに使用できています。Bluetooth接続ですが、こちらも苦労していませんねぇ。
Bluetoothキーボードが使えないような困った状態のときでも、それからUSBキーボードを挿せば認識してくれますし、『どうにもできない』みたいな八方塞がりな状況にはならなくなったので、安心して使い続けられます。
んで、音が良い! Windowsは元々ミキサーに難があって、音質上げるためのバッドノウハウみたいなものがあったりするのですが、それよりも確実に素の音が良いんです。何なんですかね? この差は。
あと、やっぱり、あらゆる操作が機敏です。いちいちワンクッション待たされるWindowsとは大きく異なる点です。Windowsは『わざとか!』って言うくらい反応が鈍い(実際、わざと遅らせているところもありましてレジストリを書き換えれば速くなるところもあります)のですが、こちらはストレスフリーです。
アプリの実行速度もほとんどの場合Linuxの方が速く、同じハードでLinuxへと移行した筆者はきっちりと体感出来るレベルです。遅くなったのはV2Cくらい。でも、それも最近のOpenJDKアップデートで改善されたので、遅くなったアプリはほぼ無くなりました。
もうね、NetbeansとかAndroidStudioとかの起動に時間が掛かる系がとにかく速いんですよ。ここいらはWindowsに戻る気になれない大きな要因ですよね。
そして、メモリー使用量も少なく済みます。メモリー増設しようかどうしようかみたいな微妙なシステムなら、WindowsからLinuxに変更するだけでメモリー増設しなくても当面はやり過ごせるようになります。(ただ、調子に乗ってバカバカアプリ使ってたら、まだメモリの空きがあるはずなのにいきなりシステムが落ちて再起動したなんてこともありました。この辺は筆者の設定が悪いのかOS不具合なのか分かりませんが。)

筆者の常用しているアプリの大半がLinux版もある(というか大元がLinux版)というのも、筆者がLinux移行に向いていたのかもしれません。
が、改めてLinuxメインでアプリを考えていったとき、Windowsで必要としていたアプリの多くが、Linuxではシステムに組み込まれているので不要になったり、統合されて1つのアプリで完結したり、といった具合で非常にスッキリしたのも大きなメリットでした。(特にSSHとかのネットワークアクセス周りですね)
Linux移行によって、Texベースでの書籍組版への道が簡単に開かれたといった、新たな世界も見えました。
Windowsだと必要なアプリを自分で探してインストールという作業が必要ですが、Linuxではある程度まとめて1セットでインストールできるものが多く、それでいてストレージの圧迫もそんな酷くなく、何よりWindowsよりも速い、変なアプリを同時混入させられたりしない。セットでインストールできるからアプリ相互の整合性を取るための環境設定の手間とかも少なく済みます。
アップデートもアプリ別に行う必要はほぼ無く、一遍にアップできるので楽々です。
今までの経験上から、恐らく消費電力的にはWindowsの方が省電力なのでしょうが(アイドル時限定)、デスクトップPCならそのデメリットもほとんどありません。(そもそもデスクトップPCはアイドル消費電力低減が苦手ですからね)


とはいえ、全てがLinuxで賄えるようになったわけではありません。僅かですがWindowsでないと不便な部分というものも残されています。
その辺りは、WineもしくはVirtualBox上にWindowsを置いて、それで凌ぐようにしています。
Wineで十分に動いてくれれば良いのですが、Wineではやはり変な癖が残ることが多く、例えば、Windowsで一番使うアプリであるサクラエディタなんかですと、漢字変換したときに変換ウインドウが文章から離れている、また、予測変換から通常変換に切り替わったときの変換候補が表示されない(変換候補ウインドウが表示されないのはmozcの仕様のようだが、打ち込んでいる文章上の文字も表示されないため一旦全てが消えてしまったかのようになってしまい、かつ、その変換候補の一番目が何なのか分からないので確かめようと思ったらさらに変換キーを押して変換候補ウインドウを表示させてから、と2〜3クッション増えてしまう。)、ウインドウ切り替えをしたときにカーソル移動が効かなかったり、勝手に範囲選択モードになっていたりして、その都度、状況を確認し整え直す作業が必要になる、など不便な点が多く、なかなか使い物になりません。
VirtualBoxでも特にインタラクティブな動作は苦手なようで、例えばExplorerで表示しているフォルダ内のファイルに変更があってもリアルタイム追従してくれないのでF5を押す必要があるなど、ゲストOSならではの特殊作法はありますが、まぁそこそこ使えます。
ホストWindowsゲストLinuxにしている方がほとんどだと思いますが、筆者はその逆、ホストLinuxゲストWindowsで現在の形の方が気に入っています。
VirtualBox共有フォルダーを上手く利用すれば、例えば、筆者はシステムをSSDに、データドライブをHDDに入れていますが、データドライブを共有フォルダに設定して、適切なドライブレターを割り当ててあげれば、ゲストOSでもほぼほぼホストと似たような操作感で使えるようになります。
また、/dev/shmを共有すれば、Linux上のRAMドライブをWindowsから使用できるので速いテンポラリフォルダが欲しいときに便利です。(/tmpを共有しても良いのかもしれませんね)
ホストでSQLDBを参照するプログラムを動作させて、ゲストでそのDBを弄ってたりするとDBがぶっ壊れたりしますが、そういった辺りはまぁ使い手が気を付けます。

富士通

Linux導入で気を付けたいこと

Windowsとは流儀が違うので苦労する箇所が変わります。
Linuxは特に日本語での情報が少ないせいか、『今もうそれ必要ないよ』とか『それもう変わってるよ』というような古いノウハウが検索ヒットしやすく、その情報の新旧混合がLinuxシステム理解への大きな障害となります。とりあえず、なるべく新しい情報から触れるように心掛けてください。(筆者はよく期間を限定して検索します。それでも古い情報が新しいフリをして混ざってきたりしますが。)
あと、これはLinuxに限らず、少なくともIT情報一般に言えることなのですが、英語苦手な人が英語の文献を読まずに試行錯誤した結果をノウハウのように記載しているページが多いように思います。(うわっ、これ盛大なブーメランじゃね? グサッ)
英語が出来なくても良いですから、英語のマニュアルが読めるようにはなったほうが良いです。英語全般をマスターするよりも英語のマニュアルが読めるようになるという方が敷居は低いです。
マニュアルが読めれば簡単に済ませられていたところを、わざわざ試行錯誤してスマートではないやり方を発見する、みたいなパターンが多いような気がします。日本語の文献って。
そうは言いながらも筆者も英語はしんどいのでついつい日本語の文献に頼ってしまうのですが、結果的にそれで大きな回り道を強いられてしまったことが何度もあるので、なるべく英語に慣れようと努力しています。
そもそも、日本語化を待っている時点で遅れが生じますので、そういった意味でもなるべく一次情報を見るように心掛けましょう。(上記の新旧情報混合問題の件もありますので)
苦労させられたときは『だからLinuxは嫌だ―!』って思うこともあるかもしれませんが、実際のところ、ある程度PCの扱いに慣れていて、ある程度検索の仕方など工夫ができて、英語のドキュメントでも読もうとする気概があれば、苦労に掛かる時間のトータルはWindowsよりも少なくて済むんじゃないだろうか? というのが筆者の実感です。
苦労の結果、通常の作業が今までよりも簡潔かつ素早く済ませられるようなる、なんてことも良く起きるので、トータルで見ると決して悪いものじゃないんですよ。

LinuxとりわけUbuntuですと、通常の9ヶ月だけサポート版の他に5年(今は3年でしたっけ?)間の長期サポート版であるLTSがありまして、これだけを見るとどうしてもLTS版が魅力的に映るかもしれません。
が、筆者の体験だけで言わせて頂くと、LTSはバージョンアップの間隔が大きく広がってしまうが故にバージョンアップ時に大きな不具合を発生する可能性が高くなり、結果として苦労します。
それに、主要なアプリLibreOfficeとかKritaとかGIMPなど、アプリの安定性や機能向上のアップデートが比較的盛況に行われていますので、こういったものは積極的に最新を取り入れて行った方がトータルで吉だと思います。(流石にNightlyBuildを入れろとは言いませんが)
なるべく長期間同じ環境で安定動作させたい(かもしれない)サーバー運用と違って、デスクトップ環境では最新のStable環境を追っていった方がメリットが大きくかつトラブルも少なめ(あっても些細なことで済む可能性が高い)なので、個人で使うデスクトップOSとしては無理にLTS版で留まっていないで半年毎にグレードアップしていった方がお得です。(仕組みは良く分かっていないんだけどグレードアップすると動作が軽くなるんですよね)。なので9ヶ月という短いサポート期間は当然と言うか、古いのに留まっている意味が無いんです。Windowsと違ってデグレは少ないですから。

Linuxにすると、良くも悪くも作業スタイルが変わります。その変化が嫌いじゃなければデスクトップLinuxもなかなか良いものだと言えそうです。

2018-11-04

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