メカニカルキーボード DN-915869

さて、2019-01-30に『入力機器再検討』という記事を書きまして、長らく続けていたポインティングデバイス付きキーボードの使用を諦めて、普通のコンパクトキーボードとトラックボールという昔の筆者の構成に戻しましたよ、としたのですが、トラックボールの方はそのまま使用を継続しているのですが、キーボードの方がどうしてもしっくり来なくて相変わらずああでもないこうでもないとちょこちょこ入れ替えたりし続けています。
キーボードの製品そのものは出来の良し悪しを考えなければもう十分過ぎる数を所持しているし、筆者は衰退先進国のさらに先頭を突っ走る貧困先駆者ですのでこれ以上キーボードを購入することなど御法度、なのですが、買ってしまいました。
上海問屋のメカニカルキーボード DN-915869
86キーの日本語キーボードで、[Enter]キーの右側に1列コントロール関連キーが隣接しているタイプのコンパクトキーボードです。

言い訳はさておき、この製品。従来の筆者では絶対に選ぶことのなかった類の製品なのですが、なぜ、急にこんな筆者的イレギュラーに手を伸ばしてしまったのか。
一言でいうと、従来の筆者の考える理想に近いキーボードが、全く存在しないし近未来出てくる可能性も無いと予想できてしまったからでした。

筆者の欲しいキーボードは軽くて浅いタッチ。スルスルとスムーズに打てるキーボードです。
懐古主義みたいになってしまいますが、筆者の手持ちで言えばノートPCである初代のSONY VaioZとIBM UltraNavキーボードSK-8845です。
当時はPCの絶頂期とも言える頃でWinmdowsXPとこれらのキーボードの組み合わせはキー入力関連の環境としては最高だったと思います。
ところがコストダウンが進みアイソレーションタイプのキーボードが流行りだす頃の製品になると、浅いのになんか嫌な引っ掛かりを感じる製品にしか巡り会えないようになります。
頼みの綱だったIBMもLenovoに買収されて見事に安物化。後継製品の「ThinkPad Compact USB Keyboard with TrackPoint」KU-1255も褒める人が結構見受けられますがどうしても嫌なフリクションがあって何度挑戦しても馴染めませんし、手が痛くなります。
浅いストロークが特徴のはずのパンタグラフ式キーボードも、いつの間にかストロークを2mm確保、って深さばかりを強調するようになってしまっています。
ですが、パンタグラフはその構造上ストロークを深く取ったら利点が消えてしまうんです。フリクションが増えてしまうんです。
結果として、浅いのを意図的に底まで力強くグリグリと押し付けないとちゃんと入力できないようなキーボードばかりになってしまって、なんかもう、パンタグラフも信用できなくなってしまいました。

そこで、筆者も考え方をガラリと変えまして、一旦、ストロークの浅さに拘るのは諦めて、タッチの軽さを重視してみたらどうか、との思いに至りました。
そして、目を付けたのが、これ、DN-915869だったのです。

メカニカルキーボードはもしかしたら遥か昔に使っていたかもしれませんが、少なくともキーボード単体の製品として購入したことは無いので、所持して使い込むということは筆者は初めて(かうん十年ぶり)のことになります。
お金が無いので安価な中華メカニカルも検討していたのですが、クーポンやら還元やらで大差無い金額にまで抑えることができたので、今回はこちらの製品に託してみました。(って言ってもこれもMade in Chinaなんですけどね。)
うちではメンブレンキーボードでさえ撤廃して久しいので、超久し振りのぶ厚いキーボードはどうなるのか、期待と不安が入り混じります。

上海問屋のメカニカルキーボード DN-915869

第一印象、『ぶ厚!
キーボード面そのものが置いている机から大きな段差となっていて、これパームレスト無しで使い続けるのはしんどいですね。
軽く触れている程度のつもりでも入力されることがあり、全ストロークは深いですが入力されるまでは結構浅く、押し込まなくてもバンバン入力できます。
逆に言うと、入力するつもりが無くても指を置いたキーがリピート入力されている、なんて失敗が頻発します。
ついでに言うと、運指の途中でどこかのキーに引っ掛かってしまうと、そのキーも大抵入力されてしまいます。
ただ、これらは、『だから悪い』ではなくて、そういう特性の、タッチの軽いキーボード。筆者の想定どおりのキーボードが入手できていることの証明でもありますので、これから筆者が慣れるべきところです。

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タッチが軽いことは好ましいのですが、安易にキーボードの上に手を乗っけておくということができなくなってしまいました。
また、キー入力中も、手を浮かせ気味にしていないと余計な誤入力が頻発してしまいますので、指や手が痛くならなくなった代わりに肩が凝ります。
やっぱり適切なサイズのパームレストが必須でしょうか。

誤入力についてはそれだけてはありません。
購入前に気が付かなかった自分が悪いのですが、このキーボード、変態配列以前に最下段(ZXC……)の配置が一様にやや左にズレています。(しかも、なんか今頃になって思い出したんだけと、この製品の発売当初に画像見てズレに気付いて『これはナイな』って思っていたような気がする……)
設計の意図を考えてみると、ほんの少しだけ理解できなくもないのですが、やはりここは基本の位置を守って欲しかったように思います。
確かにメカニカルスイッチの都合上、キーの大きさには大きな制限があり、アイソレーションタイプのコンパクトキーボードに良く見られる極小キーみたいなものは設置できません。
でもですよ?
[Enter][BackSpace][左Shift]の各キーの幅を3/16インチ大きくするだけで良かったんです。
3/16インチ=4.67625mm。僅か、5mm足らずの幅をケチって主要キーの配列を乱してまでコンパクト化を優先するべきだったのでしょうか?
コンパクトと言っても86キーですから、そこまで変態配列にはしたくない、って人が選ぶ製品なはずなんですけど。
こんな変態配列を許せる人はもっともっとよりコンパクトなキーボードを選択するんじゃないかな?

とかなんとか言っちゃって、実は実際に打っているとこの最下段の5mm弱のズレ、そこまで目くじらを立てるほど実害は発生しません。
いや、この配置に慣れてしまうと、標準配置に戻ったときに困るのかもしれませんが。
運指の都合上、ほとんどのキーはむしろ運指が近くなって楽に打てるようになります。
困るのが[N]キー。
右手人差し指をより遠くまで伸ばさなければならないので単純に打ちにくいですし、[N]キーを押したときに人差し指の腹が隣の[M]キーに触れて"m"も入力されてしまうことが多発します。

ただ、それも、日本語入力をしている場面ではさほど問題にはなりません。
ただしこれは筆者の特殊な事情が絡んでいるせいでして、筆者はここのところ、日本語入力のキーマップを独自にカスタマイズしていまして、日本語入力のときはホームポジションという扱いで[N]キーに右手親指を置いているのです。
[N]キーに右手親指を置くにはむしろこのズレのお陰で打ち易くなっている側面もありまして。
偶然の産物ではあるのですが、ズレが功を奏している面もあるだなんて……。でも、やっぱり標準配置に戻るときにまた苦労するハメになるのは嫌だなあ。

さて、もう一つの懸念事項にも触れておきましょう。

DN-915869 [Enter]キー右側の配列

[Enter]キーの右側に縦一列で[Home], [PgUp], [PgDn], [End]と並べる配列はこれまで筆者は論外レベルで嫌っていたものなのですが、何を思ったのか、今回、改めて見直してみようという気になりました。
この手の配列について、筆者はこれまで、キーボードの配列なんか気にしない人がなんとなくたまたま購入してみたらこの配列だった、ってだけでしか、謂わば積極的に選ばれる配列では決して無い、と思っていました。
この配列の利点を述べてくれるような情報にも巡り合った試しがなかったですし。
Enterキーはとにかく右に目一杯という、ある種雑な手の伸ばし方は出来なくなるのですが、意識を「普通のキーを押下する感覚で」場所を狙って打ちにいくようにすれば、キーそのものが大きいこともあってまず打ち間違わずに済みます。
それよりもBackSpaceキーの押下の方が気を遣うかもしれません。って、書きながら何度か無意識にBSキー押下していたけど、特に打ち間違わないなあ。……って安心したら、[HOME]キーを誤打することはほぼ無いですが[\]キー誤打を連発するようになってしまいました。(´;ω;`)

ところで、悪いところばかりではなくて、この手の配列で良い点も見つけることができたので、それをここに記載しておきたいと思います。
筆者は現在、ポインティングデバイスとしてトラックボールを使用しているのですが、トラックボールは当然、キーボードのすぐ右に隣接して置いています。
そうするとですね、この[Home], [PgUp], [PgDn], [End]キーにですね、トラックボールに置いた右手から親指や人差し指を伸ばすことで比較的アクセスが楽に行えるんです。
ウェブブラウジングなんかで、どこかをクリックして、そのままの右手でページスクロールとかホイール回すよりも手早く楽に出来ます。
そういった加点も考えると、この配列もそこまで悪くはない、と思えるようになりました。

筆者がキーボードの配列について寛容になった面もありますが、昨今のキーボードはコントロールキーの配列があまりにもバラバラであるため、寛容にならざるを得ない状況にもあります。
その点では、入力効率が間違いなく落ちていて、これはもう諦めるしかない状況です。
キーボードデバイスを一種類に絞れればまだどうにか出来る余地もあるのかもしれませんが、結局はノートPCやタブレット、スマホなどのデバイスでキー入力するときにまで毎回必ず同じキーボードを接続するのか、って話になると、そこまで神経質に環境を揃えようとするのに余計に掛かった時間とそこまで拘って入力効率上げて節約できた時間、どっちが長かった? って話にもなりかねないですし、そもそも筆者がそんなにいつも秒を争うような生き方をしているわけでもないですからね。考えている時間は手が止まるんだし、そこまで大量の入力作業をしているわけでもないですし。

あ、ついでに配列についてもう一つ言わせていただくと、最上段のファンクションキーはこんなに右に寄せなくても良かったんじゃないかと思います。
[Esc]キーから離したい気持ちも分かりますし、CAPSLOCKのインジケータの場所の都合があることも分かるのですが、もう半キー分だけ左に寄せて、[DEL]キーとも離した方が良かったと思います。
あと、単純に[F4]キーや[F5]キーが物凄く右に行ってしまったので違和感が半端ないんですわ。(コンパクトではないキーボードではこれが当たり前なのかもしれないけれど。)


で、話題を変えまして、このキーボードはゲーミングキーボードにも分類される製品でありまして、複数のキーを同時に押したり連打しても綺麗に追従してくれるという美点があります。
「ゲーミング」って作業には役立たないんじゃないか、なんて思われるかもしれませんが、そんなことは全然なくて、近年のキーボードは同時押しの認識にきつい制限が設けられている製品が非常に多く、それでいてキー数そのものも減らしていく傾向にあるため、特にコンパクトにしているキーボードでは「それ、どうやってもこのキーボードじゃ入力できないじゃん」というケースが結構目立つようになって来ています。
そういった心配な点ではゲーミングキーボードの方が優秀です。

あと、地味に便利なのがLED透過照明。
筆者は元々はこの辺りも『余計なもん付けるな』って言う側の人だったんですけれども、ここ数年、部屋の照明を極力使わないようにしていまして、現在は2.5WのLED照明を基本的に使っていて、それも天井じゃなくてベッドサイド照明なんです。
そうするとキーボードの印字って非常に見づらいんですね。主要キーは印字見なくても打てますが、等間隔で12個並べられたファンクションキーなどは流石に印字を確認したくなるんです。
そこで、100均の小さなデスクライトみたいなUSBLEDをキーボード面に向かって照射していたんですけど、これも位置や角度などによって見にくいところがどうしても出てきちゃうんですね。
それが、この手のキーボードですと、印字に相当するところが透明になっていて、その下で発光するLEDの光が透過するので、暗い場所でも一様に全てのキーの位置が確認できますし、上からの光だと自分の手の影に隠れてしまうなんてこともありますが、下からの透過照明ならば印字部分を直接隠してしまわない限りは影で見えなくなることがありません。
また、照明の明るさも簡単に調節出来るので、明るい昼間はOFFに、暗くなったら一番暗い点灯状態にすればそれで調度良い感じです。
LED照明は調整できるのであれば暗くして使うほど長持ちするので、その面でも良い感じです。


最後にこれまでの筆者の手持ちキーボードと並べた比較画像の置いて締めとしましょう。

DN-915869 KU-1255との比較

まず、「ThinkPad Compact USB Keyboard with TrackPoint」KU-1255との比較です。
奥行きはクリックボタン兼パームレストがある分どうしてもKU-1255の方が大きいです。が、DN-915869のぶ厚いキーボードでは別途パームレストが必須になるのでどっちもどっちです。
ペンタブレットと同時に使う分には単純に奥行きが小さい方が使い易いので、そういう意味ではDN-915869の方が扱い易いです。
幅はキー1つ多く並んでいるDN-915869の方がどうしても大きくなってしまいますが、KU-1255はベゼルが太いので差はそれほどありません。

DN-915869 SKB-SL18BKNとの比較

続いて、SKB-SL18BKNとの比較ですが、SKB-SL18BKNは標準ピッチのキーボードとしては最高レベルの配列効率で全てにおいて素晴らしくコンパクトです。
ほんと、このキーボードがキーが変に引っ掛からずにスムーズに入力できる製品だったら、筆者は迷わずこのキーボードを使い続けたんですけどね。
残念な製品です。

DN-915869 TK-FBP037との比較

最後はTK-FBP037との比較。キーピッチが約17.4mmと小さいのでとってもコンパクトです。その割にキー数が多めで、Windowsでは使うことが無いがLinuxではまだたま〜に使うこともあるよねっていうキーがあったりして何気に貴重な製品でもあります。
惜しむらくは無線専用であること。

残念なことに、『変わんねえよ』と言いたいところですし、そう自分にも言い聞かせたりもしたのですが、やっぱ無線のラグはどうしても筆者のペースを乱し、無意識のうちにストレスを溜めてくれます。自覚しにくいレベルでキーボードに触りたくなくなるんですよ。
あと、小さめなキーピッチも好みではあるのですが、実際のところデスクトップでキー入力をする分には少々筆者の手にはデカ過ぎる標準ピッチの方がなぜか疲れにくいというか、なんか良く分からないけど、なぜかこのキーボードで長時間作業が向いていないっぽいです。
ベッドで寝そべってキー操作する分にはVaioP最高なので、この製品も寝そべり打ちには向いていると思うんですけどね。
あ、でも、本当に微妙な話ですけど、もうちょっとキータッチ軽くして欲しいです。それと、ストロークは1.7mmで昨今のパンタグラフの中でも浅くて良いですが、もっと浅くて良いです。

2020-05-07

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